いえづくり計画㉔ ~住宅ローン動向②~

2025年5月23日 更新

佐藤拓哉

大阪本店

いえづくりコラムでは皆様のいえづくりの役に立つ情報を発信していきます。

第24回は 住宅ローン動向②編 です。

「住宅ローン、今が“最後の低金利チャンス”ですか?」

最近、そんな質問をよくいただきます。

確かにここ数か月で住宅ローン金利は静かに、でも確実に上がり始めています。

1年前にこのいえづくりコラムで住宅ローン動向①を書いた時も少しずつ長期金利が上がってきてましたが、その時よりもさらに上がってきています。

では、慌てて固定金利にすべきか? それとも変動金利を選び続けるべきか?

今回は、ローン金利の今とこれからを踏まえて、「どの選択肢が自分に合っているのか」を考えるヒントをお届けします。


■ なぜ金利が上がってきたのか?

1. 国内の長期金利が上がっている

固定金利の指標となる日本の10年国債利回りは、現在1.5%を超える水準まで上昇しています。これは30年ぶりの高水準です。

2. アメリカの長期金利上昇に引っ張られている

アメリカでは政府の財政不安が続き、長期金利は5%台に。これに連動して、日本の長期金利も上昇圧力を受けています。

この結果、フラット35など長期固定型ローンの金利は、昨年よりも0.4〜0.5%ほど上昇しています。

1年前には1.6%台だったフラット35も、今では2.0%を超える水準に達しています。


■ ただし、変動金利は“据え置き”のまま

一方で、変動金利に影響を与えるのは、日銀がコントロールする「政策金利」です。

現在、日銀は追加利上げに慎重な姿勢を保っており、当面は大きく動く見込みはありません。

なぜかというと、トランプ政権の復活とともに再び始まった高関税政策が、日本経済にとって大きなリスクとなっているためです。

この不透明感から、日銀は「今はまだ利上げできない」と考えているのです。

その結果、固定金利だけが先に上がり、変動金利は低いまま据え置かれているという“金利の分断”が起きています。


■ 今、ローンを選ぶならどうすべきか?

では、このような状況の中で「どの金利タイプを選ぶべきか?」を考えるうえで、ポイントをいくつか挙げてみましょう。

◎ 1. 固定金利を選ぶべき人

・借入金額が多く、返済期間が長い人

・将来の金利上昇に不安がある人

・毎月の返済額を一定に保ちたい人

固定金利は金利が高めな分、“安心感”が魅力です。金利が今後どう動いても、返済額は変わらないので家計管理がしやすくなります。

◎ 2. 変動金利を選ぶべき人

・借入期間が短めの人(15年以内など)

・繰り上げ返済を予定している人

・毎月の返済額をなるべく抑えたい人

変動金利は今のところ低金利が維持されており、毎月の負担が小さく済みます。ただし、将来の金利上昇には注意が必要です。

◎ 3. 迷ったらミックスローンも選択肢に

「先が読めないから不安…」という方は、一部を固定金利、残りを変動金利で借りる“ミックス型”ローンも検討の価値があります。

これにより、リスクを分散しつつ、ある程度の低金利メリットも享受できます。


■ 金利上昇が家計に与える影響は?

仮に、今後1%金利が上がった場合、ローンの返済額はどれくらい増えるのでしょうか?

たとえば、借入額3,000万円・35年ローン・元利均等返済で考えた場合、

金利1%アップで、総返済額が約600万〜700万円増えることになります。

このように、金利の変化は家計に大きな影響を与えるため、ローンの選び方は慎重に考える必要があります。


■ いま検討すべき3つのステップ

  1. まずは自分のローン計画を「見える化」しましょう

     返済期間、借入金額、毎月の返済可能額を数字で整理してみることが第一歩です。

  2. 複数の金融機関で比較してみましょう

     銀行によって金利や手数料、団体信用生命保険の内容が異なるため、1社だけで決めないことが大切です。

  3. 住宅ローン専門のFPに相談してみましょう

     銀行では教えてくれない「固定と変動の境界線」や、返済計画の立て方など、中立的な立場でのアドバイスが得られます。


金利が上がるか、下がるか。未来を完璧に読むことは誰にもできません。

しかし、自分の将来設計を明確にし、複数の選択肢を比べて備えることはできます。

ローンは“買い物の支払い方法”ではなく、“人生設計そのもの”。

金利の動きに惑わされることなく、冷静に、自分に合ったローンを選びましょう。