いえづくり計画⑳ 〜都市の狭小地(旗竿地含む)で快適に暮らすコツ〜
2025年1月28日 更新
いえづくりコラムでは皆様のいえづくりの役に立つ情報を発信していきます。
第20回は 都市の狭小地(旗竿地含む)で快適に暮らすコツ編 です。
近年、都市部では土地価格の高騰や区画の細分化に伴い、狭小地や旗竿地(敷地の一部が竿のように細く伸びた形状の土地)への需要が高まっています。「こんなに細い土地で、本当に暮らしやすい家が建つの?」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、限られた敷地でも“諦めない”家づくりのポイントをご紹介します。
1. 狭小地・旗竿地が注目される理由
①立地の良さ
駅や中心街に比較的近い物件が見つかることが多く、通勤や通学の利便性が高いです。
②価格の割安感
敷地形状が特殊なため、一般的な整形地と比べると土地価格がやや抑えられるケースがあります。
③資産価値の安定
都市部の人気エリアは、今後も地価が下がりにくい傾向にあります。変形地だとしても、立地の良さが資産価値を支えてくれることも。
2. 狭小地でも快適にする建築アイデア
①縦方向の活用
階数を増やして生活空間を縦に広げることで、居住面積を確保します。吹き抜けを取り入れると、狭さを感じにくい開放的な空間づくりが可能です。
②スキップフロアで空間を分節
部屋を完全に区切るのではなく、半階ずつ高さをずらす「スキップフロア」設計もおすすめ。視線が抜けるため圧迫感を減らしつつ、プライベートスペースと共有スペースをゆるやかに分けられます。
③光と風を取り込む工夫
隣家が近い狭小地では、日当たりや通風を確保するための設計が重要。上方から光を取り込む天窓や、風が抜けるように通り道となる小窓を計画的に配置すると、明るく快適な室内環境を実現できます。
④屋上やバルコニーの活用
土地が狭くて庭が取れない場合、屋上やバルコニーを“セカンドリビング”として活用するアイデアも。耐水・防水対策、プライバシー確保をしっかりとした上で、家庭菜園やアウトドアリビングを楽しむことが可能です。
3. 旗竿地ならではのプランニング
①通路(竿部分)の活かし方
車の出入りがしやすい幅を確保できるのか、植栽やエントランスの演出に使えるかなどを検討しましょう。カーポートを兼ねた屋根付き通路にして、雨の日の荷物の出し入れを快適にする方もいます。
②玄関の配置とアプローチ
通路が細長い場合、玄関位置を工夫することで人の動線がスムーズになる設計がポイント。外との距離ができる分、プライバシーは確保しやすいメリットもあります。
③周囲の建物からの採光・通風計画
旗竿地は隣家との距離が不規則になりがち。遮蔽物をできるだけ少なくした窓計画や、光を取り込む吹き抜けの活用などで、屋内の明るさや風通しを確保しましょう。
4. 狭小地でこそ取り入れたい「収納アイデア」
①床下・階段下を有効活用
普段使わないシーズンオフの荷物や災害備蓄品などを、床下収納や階段下収納にまとめると、部屋の生活空間が広がります。
②造作家具でスペースを最適化
既製品の家具だと微妙に余るスペースが出ることも。造作家具なら、壁や柱の形状に合わせてピッタリ収納を設置でき、見た目もスッキリ。
③天井近くの壁面収納
天井近くの壁面を有効活用することで、リビングや寝室の床スペースを広く使えます。高い場所にしまうので、必要に応じて踏み台を用意するなど、安全面の配慮も大切です。
5. 狭小住宅づくりで失敗しないためのポイント
①優先順位をはっきりさせる
「家族構成」「ライフスタイル」「将来設計」などを総合的に考え、どうしても譲れない要素と妥協できる部分を明確にしておくことが大切です。
②設計事務所・工務店選びは慎重に
狭小地や旗竿地の実績が豊富な設計事務所や工務店は、光や風の取り込み方、防音・断熱対策など経験値が高く、思わぬアイデアを提案してくれます。
③建築法規の確認を徹底する
道路斜線や隣地斜線など都市部特有の制限も多いので、事前に建築基準法や条例を入念に確認することが重要です。
④長期視点でのリフォーム・メンテナンス計画
狭小住宅はスペースに限りがある分、水回りや屋根などのメンテナンス工事が大規模になるケースも。あらかじめ点検口や設備交換の経路を意識した設計にするのが賢明です。
まとめ
狭小地や旗竿地は、一見「不便そう」「窮屈そう」というイメージを持たれがちですが、土地の形状を逆手に取った設計アイデアや収納の工夫によって、驚くほど快適な住まいを実現することができます。
「都市で暮らす利便性」と「自分らしい住空間」を両立させたい方こそ、狭小地だからこそ生まれるアイデアや楽しみ方を検討してみませんか?
このコラムが皆様のお役に立てることを願います。
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