いえづくりニュース⑥国が描く2050年の家づくり ―「建てる」から「つかいこなす」時代へ

2026年10月27日 更新

佐藤拓哉

大阪本店

いえづくりコラムでは皆様のいえづくりの役に立つ情報を発信していきます。今回の住宅業界に関するニュースは次の通りです。
 
【今月のニュース】
■ 国が「2050年の建物のあり方」の素案を示しました
国土交通省は2026年10月26日、社会資本整備審議会の建築分科会と建築基準制度部会の合同会議(第51回)を開き、「建築分野の中長期ビジョン(素案)」を審議しました。副題は「2050年を見据えた『建物をつかいこなす社会』への大転換」です。
このビジョンは、2050年を見据えつつ、今後10年間に国や業界が目指す方向を示すものです。5年ごとをめどに見直すとされています。まだ素案の段階ですが、今後の建築基準法などのルールづくりの土台になります。
■ キーワードは「ストック型社会」
これまでの日本の建築は「新しく建てること」が中心でした。素案はこれを改め、新築か既存かを問わず、建物の価値を見極め、手入れし、必要に応じて改修し、次の持ち主へ引き継いでいく社会を目指すとしています。
新築をやめるという意味ではありません。素案は「新築は不可欠」としたうえで、新築を「消費されるもの」ではなく「将来の社会の財産(ストック)」としてつくるよう求めています。また、価値が低く見られがちな「中古」という呼び方をやめ、「既存」という言葉を使っている点にも、国の姿勢が表れています。
■ これから家を建てる人に関係しそうな5つの方向性
  1. 「建てた後」まで考えた家づくり
    素案は、新築の段階から、将来の維持管理・改修・引き継ぎ・解体までを見通すよう求めています。具体的には、間取りの変更や増改築に対応しやすい計画、メンテナンスしやすい部材や設備の選び方、建てた会社以外でも直しやすい工法などです。完成時の性能だけでなく、「将来、性能を高められる余地」も評価する仕組みを検討するとしています。
  2. 家の「履歴書」を残して引き継ぐ時代へ
    設計図書、検査記録、点検・修繕・リフォームの履歴などを蓄積し、売るときや相続するときに引き継げる環境を整える方針です。これと並行して国は、10月8日に「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」を立ち上げました。点検や補修をきちんと行ってきた家が市場で適切に評価される仕組みや、その情報を保存・活用する仕組みを検討し、2027年3月にとりまとめ案を示す予定です。住宅ローンやリバースモーゲージでの活用、インスペクション(建物状況調査)や瑕疵保険の充実も論点に入っています。手入れの記録が、将来の家の値打ちを左右する時代が近づいています。
  3. 省エネは「建てるときのCO2」まで
    2026年7月31日には改正建築物省エネ法が公布され、法律名に「脱炭素化の促進」が加わりました。これまで省エネの評価は「住んでいる間に使うエネルギー」が中心でした。今後は、資材の製造から施工、解体までを通じたCO2排出量(ライフサイクルカーボン)を評価する制度が、公布から2年以内に始まります。国の資料では、住宅を含むすべての建物について、建築士が建て主に説明する仕組みも示されています。木造を選ぶことで製造時のCO2を減らせる例も挙げられています。国の目標は、2030年に新築をZEH水準の省エネ性能に、2050年に既存を含む住宅全体の平均をZEH水準にすることです。
  4. 耐震は「令和8年熊本地震」の検証待ち
    7月28日に発生した令和8年熊本地震(最大震度7)では、住家の全壊が2,249棟にのぼりました(9月9日時点)。国の有識者委員会は、建築年代別(1981年6月の新耐震基準以前・以後、2000年6月以降)の木造住宅の被害に加え、長期優良住宅や耐震等級2・3の住宅の被害についても原因を分析しています。とりまとめは今年度内の予定です。結果によっては、今後の耐震に関する議論に影響する可能性があります。
  5. 大工・建築士は「地域の守り手」
    素案は、大工や建築士を「暮らしとまちを形づくり、災害時には地域の復旧を支える担い手」と位置づけています。そのうえで、適正な工期や労務費の確保、職人の直接雇用の推進などを掲げました。また、7月31日に公布された改正建築士法により、書面での契約が必要となる範囲が、面積にかかわらず建築士が行うすべての設計・工事監理の契約に広がります(施行は順次)。小さな住宅でも、設計の内容や費用を書面で確認できるようになります。
■ 今後のスケジュール
国は、ビジョンを2027年2月ごろにとりまとめる予定です。それに先立ち、建物の情報をデジタルで記録・活用するための「建築ライフサイクルDX戦略」を、11月にパブリックコメントを経て公表する予定です。ビジョンのとりまとめ後は、建築基準法を含む規制や制度のあり方を議論していくことになります。素案は、これを「単なる規制緩和ではない」と明記しています。
■ 家づくりを考えている方へ
すぐに家づくりのルールが変わる話ではありません。ただ、国の方向性ははっきりしています。「建てて終わり」ではなく、「長く手入れして使い、価値を保ったまま次へ引き継ぐ家」が評価される時代です。これから建てる方は、次の点を意識しておくと安心です。
・図面、検査済証、保証書、点検・修理の記録を一か所にまとめて保管する
・将来の家族構成の変化に合わせて、間取りを変えやすい構造かどうかを確認する
・耐震等級や省エネ性能など、性能を「数字や書面」で示してもらう
・設計や工事の契約内容と見積の内訳を、書面で確認する
出典:
国土交通省 報道発表「今後の建築分野の中長期的なあり方について議論します」
https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001161.html
第51回 建築分科会等合同会議 配付資料(中長期ビジョン素案、省エネ法改正、建築士法改正、令和8年熊本地震、住宅の維持保全・流通に関する制度検討会 ほか)
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house05_sg_000316.html

 

 今回国が日本でのこれから先のいえづくりについてどのようなビジョンを描いているのか、が見えてきました。今まで日本では新築を建てる=建築というような考え方が一般的でしたが、今後は既存の住宅をメンテナンスして長持ちさせながら、新築を建てる際も長持ちさせたり将来の性能も担保される設計をしましょう、というような「長持ち」がキーワードになっています。
 また大工や建築士を「地域の守り手」と位置づけしてくれていることについて、年末には14人の職人を抱えることになる当社にとって有り難く感じます。高齢化による大工の減少が今から10年以内に一気に進むことが予想されますが、そうなったら家に問題が起きても誰も修理することができなくなります。よって今からその守り手を育成していく必要があると思ってます。当社の職人は基本は家を建てる際の「建て方」を専門としてますが、すでに職人不足に陥っている今多くの応援依頼を頂いております。こうした職人が働きやすい環境を充実させながら将来の地域の守り手を育成していきたいと考えております。