アメリカ木材先物指数から見るウッドショックの行末②
2021年8月4日 更新
以前のブログでアメリカ木材先物指数が900ドルを割り込んだ、と書きましたが、現在は600ドル台まで下がってきています。しかも7/16には536ドルまで切り下げて、「暴落した」とまで言われておりました。この背景には、アメリカの製材所の増産やトラック輸送と林業の労働者不足解消に伴う生産の更なる拡大による、とも言われてますが、投機的なお金がマーケットから引いていったこともあるのかな、と思います。
画像出典:Nasdaq/Lumber(LSB)
この暴落の影響は数ヶ月後に、日本の木材市況に反映されると言われますが、本当に数カ月後に日本の木材価格は下がるのでしょうか。
これについての私の考えは以前のブログと同様で、「下がるけどウッドショック前の価格に戻るにはまだまだ時間がかかる」です。理由として、
- 現在の価格水準はウッドショック前水準と比較してまだまだ割高
- アメリカ西海岸で発生している深刻な山火事による影響
- 国産材の供給体制
が挙げられます。
1 について現在の価格水準である600ドル台は、ウッドショック前の価格(300ドル〜400ドル)と比較して、依然1.5~2倍の価格です。これが本当にウッドショック前の価格水準に戻って日本に入ってくる輸入材の価格も元通りになるかは、正直言って分かりません。ただ一つ言えることは536ドルから反発して現状600ドル台で留まっているのはアメリカでの住宅やDIYの需要がまだまだ旺盛な為、であり当面この水準以上の下げはないのでは、と考えています。
アメリカ国務省が発表した2021年6月の住宅着工件数は164.3万件と市場予想(159万件)を超えており、3月の173.9万件と比較すると若干スローダウンしていますが、まだまだ高い需要が確認できます。
アメリカのニュースを見ていても、住宅需要がまだまだ高い事がわかります。
上記の記事ではカルフォルニア州の住宅価格が一時期に比べると落ち着いており、6月から住宅の販売とローン申請者は減少傾向にあるものの、依然需要は旺盛で在庫不足が続く見通しである、と説明されています。
よって価格水準が更に切り下がっていくことは考えづらいかと思います。
2 について、現在北米では深刻な山火事が発生しております。
8月1日現在で発生している山火事(まだ消火されていない)は91箇所で、1.8万エーカー(約7,284 km2)の範囲で燃え続けています。今年は山火事の被害が例年より深刻らしく、2020年1-7月の山火事の範囲が2.1万エーカーに対して、今年の同期間では3万エーカー(約1.2万km2)にまで及んでいるとのことです。
山火事が起こると伐採も停止する必要が出てきて(州が要請してきます)、丸太が出てこず、供給がストップし、結果的に価格が上昇することになります。この山火事の影響が今後どれだけ価格に織り込まれてくるのか、注目してみていきますが、価格上昇の一因となることは間違いありません。
3について、ウッドショックでは外国材に依存している日本の現状がクローズアップされて国産材をもっと利用すべきだという声が多く見受けられましたが、国産材の供給が一夜にして倍増することはありません。林業には中長期の観点での生産計画が必須で、急激な国産材の需要増加に供給は追いつかず、価格も暫くは高水準を維持するかと思われます。またアメリカ木材先物指数が暴落したことで国産材メーカーも、「増産しても、また輸入木材を選ぶのではないか」と疑心暗鬼になり、増産に踏み切らない可能性もあります。そうなると国産材の価格も下落するのに時間がかかりそうです。
以上の理由から、日本の木材価格は年明け頃から緩やかに下げに転じてくる、というのが私の考えです。
ウッドショックの影響が出る前に住宅を購入しようという動きが出てきており、住宅会社の4-6月期の業績が好調であるというニュースを見ましたが、我々の分譲住宅も問い合わせが増えてきており、販売間近の状態となっております。ご興味のある方は是非お問い合わせください。